人気のFX通貨ペア
最終更新日: 2023/12/07
外国為替市場は非常に大きな市場で、金融市場のなかでも特に高い流動性を持つ市場の一つです。「流動性が高い」とは、言い換えれば取引の成立頻度が高いということができます。そのため、流動性の高さは資産の運用先を選ぶうえでも重要な要素の一つと言えるでしょう。外国為替市場において、米ドルを絡めた通貨ペアの取引は、取引成立の即時性が高く、流動性が高い取引といえます。この記事では、高い流動性を持つ主要な通貨ペアについての解説をします。
尚、外国為替の世界では、米ドルを含む通貨ペアを「ドルストレート」、米ドルを含まない通貨ペアを「クロス通貨ペア」と呼びます。取引量の多いクロス通貨ペアには、EUR/JPY(ユーロ/日本円)、GBP/JPY(英ポンド/日本円)、EUR/GBP(ユーロ/英ポンド)などがあります。
EUR/USD
EUR/USDは、最も多く取引されている通貨ペアです。世界の二大経済圏である欧州と米国の通貨で構成されており、国際貿易の決済でも多くの場面で利用されます。長年、ユーロが米ドルに対して強い相場が続いていましたが、2022年にロシアのウクライナ侵攻を背景としたユーロ安の影響で、EUR/USDが20年ぶりのパリティ(等価)割れを起こし、話題になりました。
この通貨ペアはメジャー通貨ペアに該当します。流動性は非常に高く、その反面として他の通貨ペアに比べると平均的にはボラティリティが低い傾向があります。ただし、この二大通貨をつかさどる中央銀行であるFRB(米国)とECB(ユーロ圏)は、世界でも特に影響力のある中央銀行でもあり、両者の金融政策の動向には多くの金融市場の関係者が注目を集めています。そのため、この二つの中央銀行が金融政策の変更時期にある期間はEUR/USDはとても神経質な動きとなる傾向があります。
USD/JPY
EUR/USDに次いで取引量の多い通貨ペアがUSD/JPYです。日本のFXトレーダーの間での取引量のシェアはもちろん一番で、多い月は全体の8割以上を占めることもあります。日本では1999年以来、ながらく金利が0%かそれに近い水準に抑えられているため、金利の低い通貨で資金を調達して金利の高い通貨で運用を行う、キャリートレードの調達通貨としての需要が広まっており、USD/JPYでもその傾向はみられています。キャリートレードが進むなかでは、USD/JPYは上昇傾向の動きとなりやすいのですが、ひとたび先行きの不透明感が強まるニュースが報じられると、キャリートレードを決済する動きが進んで、急速に下落方向への圧力が高まります。もちろん、今後日本の金利が上昇し始める、若しくは米国の金利が下がり始める局面になると、このような傾向に変化生じる可能性がありますので、注意が必要です。
GBP/USD
英ポンドと米ドルの通貨ペアは、大西洋を横断する電話回線を通じて取引された最初の通貨ペアであったことにちなみ、「ケーブル(Cable)」とも呼ばれます。英国と米国は「特別な関係」と呼ばれるように、お互いに貿易を含めた強い連携を示す間柄にあり、これに基づく貿易面での決済需要がGBP/USDの取引シェアを支える要因となっています。GBP/USDの状況に着目すると、2016年6月に行われた英国のEU離脱の可否に関する国民投票以降、2020年のEU離脱完了にいたるまで、GBP/USDは流動性の高いメジャー通貨ペアのわりにボラティリティの高い状況が続いていました。EU離脱に関る問題も解消されてきており、現在では比較的落ち着いた値動きとなっています。
USD/CAD
米ドルとカナダドルの通貨ペアは、水鳥のハシグロアビ(loon)の絵が描かれていることから、「ルーニー」という愛称で呼ばれています。カナダドルは、カナダが石油、鉱物等の輸出国であることから、コモディティ通貨としての一面も持っているため、USD/CADは原油をはじめとした国際商品価格の影響を受けることがあります。
AUD/USD
オーストラリアドルと米ドルの通貨ペアです。以前のオーストラリアドルは高金利通貨として日本のFXトレーダーの間でも人気の通貨でした。カナダと同様、オーストラリアも天然ガス、石炭、鉄鉱石など鉱工業品の輸出国であるためコモディティ通貨としての性格をもちます。ただしこちらは主な産出品が鉄鉱石であるため、鉄鉱石価格に影響される傾向が強いようです。また、主要な貿易相手国として中国が大きなシェアを占めることから、中国経済の動向の影響が大きくなる傾向もみられています。
取引する通貨ペアを選ぶ際、クロス円通貨(円が絡む通貨ペア)を選ぶことは有効な方法の一つです。これには、片方の通貨を自国通貨のものにすることで、情報の整理が行いやすいという点と、クロス円通貨では決済通貨が円であるため損益計算が分かりやすいという理由があります。取引する通貨の選択に迷っている際には、参考にしてください。
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この記事は一般的な情報を提供するものであり、お客様の個人的な状況を考慮したものではありません。
困った際の避難先、逃避通貨について
外国為替市場には逃避通貨と呼ばれる通貨があります。逃避通貨とは金融市場にとってネガティブな状況が発生して、先行きがどうなるのか見通しづらくなった際に、資金の避難先として選ばれる通貨のことを指します。このような性格のあるものとしては金が有名ですが、金が資金の避難先として選ばれるのは、金自体の価値が不変であるためだと認識されています。一方で、逃避通貨が避難先として選ばれる背景には、金の様に通貨自体の価値に対する信頼性が高いケースやその通貨の発行国の信頼が高いことなどがあるようです。
以下では避難通貨として認識されている通貨についての紹介をします。
主な逃避通貨:
- 米ドル- 長らく基軸通貨として扱われている米ドルは逃避通貨の代表格です。「有事のドル」とい格言があるように、金融市場に危機が迫ると、資金を米ドルに替えるという傾向は古くからみられていました。ただし、近年では中国や中東の産油国等がドル離れが進んだことや、ユーロの影響力が再び強まってきていることで、米ドルの基軸通貨としての地位に対して、以前ほどの圧倒感を感じないという意見も増えています。そのようななかで、2020年以降の新型コロナウイルス流行下で金融市場が不安定になった折には、安全な逃避先としての米ドルの地位が揺らいだと評価する専門家もいたようです。
- 日本円 -円も逃避通貨として数えられることある通貨ですが、その背景は少し特殊です。2008年の金融危機後、金融不安が高まるなかで円は最も強い通貨でした。「金融不安の時に買われる通貨」という事実が日本円に逃避通貨としてのイメージを植え付けるきっかけとなりました。ただし、この事実の背景をみると、日本円の「逃避通貨」としての定義に対して疑問を抱く市場参加者もいます。もともと日本円は低金利通貨を売って資金を調達して、高金利通貨で運用するキャリートレードの調達資金として長く利用されていました。これは1999年以降、日本が先進国で唯一のゼロ金利採用国であったことが原因で、10年近くにわたって円売り/外貨買いというキャリートレードのポジションが蓄積されていました。2008年の金融危機勃発によって蓄積されたキャリートレードのポジションが急速に解消されるなか、円の買戻しが進んだために、金融不安の時には円買いというイメージが生まれたという見方です。つまり、日本円は純粋な逃避通貨なのではなく、逃避通貨の様な動きをしていただけではないかということです。
- スイスフラン - スイスフランも伝統的な逃避通貨の一つです。スイスフランの場合は発行国であるスイスへの信頼性が根拠となっています。スイスは1800年代から永世中立国として永く国際的に中立である立場を示しており、チューリッヒに次ぐ第2の都市であるジュネーブには多くの国際機関の本部が位置しています。また、スイスの銀行は強硬に秘密主義を貫くことで有名でした。これらの事実を背景に、有事の際に資金がスイスへ集まる流れが強まり、スイスフランが避通貨として認識されることとなりました。2020年の新型コロナウイルスのパンデミック時には、米ドルに対しても10%上昇する動きを見せています。